かわいい顔

医者からの説明が終わり、母を葬儀屋の車に乗せ警察署を出ようとしている時だった。
昨日の警察の方が走ってきた。
「昨日は、お母様が亡くなられて大変な時に我々が土足で入り込むようなことをしてしまって申し訳なかったです。」
そんな事をわざわざ言いに出てきてくれて車が出るまで見送ってくれた。
こんな心のある方もいるのだと、嬉しかった。

助手席に夫、後部座席に私と棺に入った母。
まだ、実感が湧かない。
無言のまま、総斎場へ向かった。
月曜日に亡くなったが、火葬場が混んでいるということで、火葬は金曜日になると言われた。
義父の時にお世話になった葬儀屋でとても親切丁寧に対応していただいた。

母を広い部屋に寝かせてくれた。
病院以来、やっと母の顔を見られる。
でも、正直怖い。もし、苦しそうな顔をしていたらどうしよう。
そう思いながら、母と対面した。
私も夫もしばらく沈黙した。
「ちょっと不謹慎かもしれないけど、お義母さんすっごくかわいい顔してるよね。安らかとか通り越して明らかに笑ってるよね。」
私も全く同じ事を思った。
悲しくて寂しくて訳のわからない感情の中で、でもかわいくてかわいくて母の顔を何度も何度も撫で続けた。
「きっと、お義母さんがこの顔なのは、俺達が自分を責めないようにっていうお義母さんの優しさだよね。」
そう夫が言った。

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