父の状態①

納骨の翌日、施設に入居している父を皆で訪ねた。
そこで起きた不思議な体験を話す前に、父の状態に触れておこうと思う。

父は、5年程前に脳梗塞で倒れた。
いつものように農作業の為、1人で畑に行っていた。
夕方になっても帰って来ない父を心配して、母が姉に見に行くよう頼んだ。
そこで、姉が倒れていた父を発見した。 今は、発見が早ければ後遺症を比較的抑えられるような薬を投与できるらしいが、父の場合は相当な時間が経過していたので、無理だった。
持参していた弁当にも手をつけていなかったので、午前中に既に倒れていたのかも知れない。

入院して1ヶ月弱の頃帰省して、事前に姉からは聞いていたが、再度医者から説明を受けた。

「お父様の左脳は全て壊死してしまっています。ですので、身体の右側は感覚がありませんし動きません。言葉も失っているので、一応リハビリをやってみていますが、周りの話していることも理解できないし、今後も話す事はないと思います。非常に言いづらいのですが、水一滴さえも飲み込む事が出来ないので、早めに胃ろうの手術を行うことをおすすめします。」
体力だけは、誰にも負けなかった父が、とても小さくなってベッドに寝ている。

私と夫の顔を不思議そうに見ている。
「父ちゃん、くまことくまおだよ。わかる?」
すると、親族だという事はわかったのか、涙を流し始めた。

9日間滞在していたので、その間に出来る事はないかと考えた。
少しでも刺激を与えたい。
家やその周り、父がよく魚釣りに行っていた場所、私達が「父ちゃん父ちゃん」と呼びかける映像を撮って、翌日父に見せてみた。
すると、すぐ号泣し始め私達の顔をじっと見ている。
また、その翌日に向かうと看護師に、
「お父様、どうかされました?何かありましたか?昨日までは、点滴も特に問題なくさせてくれたのに、今朝はとても嫌がるんです。」
その後、作業療法士の女性が入ってくると、背を向けるような素振りをした。
「今日もリハビリしましょうか。少し身体を起こしますね。」
次の瞬間、
「イヤイヤイヤ。バカ。」
作業療法士の方が、
「今、はっきり喋りましたよね?!初めてですよ!」
皆、びっくりした。

私は、父に対して少し後悔している事があった。

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