暴力で変形した足
母の認知症のような症状が増えてきて、一人で留守番をさせるのが不安になってきていたので、上京してから3ヵ月後に、介護認定調査を申請した。
簡単な認知症のテストや普段の生活の細かなチェックが行われた。
あるあるだが、第三者の前では気が張っている為か、意外とシャキッとして受け答えもしっかりしてしまう。
ただ同時に、生活チェック等について出来ない事も出来る、自分一人で出来ていると答えてしまう。
その後に、家族からの意見を聞かれるので、先程のこの項目は母は出来ると言ったが出来ていないということを、一つ一つ認定員に話さなければならない。
これが、母を前にしてだと、母を一つ一つ否定するようで非常に心が痛んだ。
その後、生活で困っているような事はないかを聞かれた。
母は足が非常に悪い。
誰がどう見ても、異常な程に左足が変形している。
よくこれでなんとか自力歩行しているなと思う程だった。
なので、入浴時にバスタブを跨ぐ事が出来ないのでかけ湯のみだったり、足の踏ん張りがきかないので、生活全般で転倒の心配があるという事等を話した。
認定員の方も、母の足を見て、どうしてそうなったかを聞いた。
母は、独身の頃に転倒して、当時病院もなく放置してしまった為、こうなったと説明した。
母は、嘘をついた。
まぁ、本当の事等言えるはずがなかった。
母の足の変形は、父の度重なる暴力が原因だった。
よく父に、自分の足がこうなったのはアンタのせいだと言っていた。
その時の状況を何度も聞かされた。
母の結婚した頃までの写真も、足は変形していなかった。
私も40手前になるが、未だに、毎晩のように繰り返されていた父の暴力が夢に出てくる。
やっぱり、なんとかして母を幸せにしたいと思った。