カビだらけの服
今にも崩れそうな家から、母を連れ出し姉宅へ向かった。
東京に向かう前日の晩、泊めてもらうことにした。
さすがに、1年も風呂に入らず異臭を放っている母をこのまま飛行機に乗せる訳にはいかない。
他の家族が帰ってくるまでの間、母を風呂に入れることにした。
姉は、沸かしたからさっさと入れというが、普段五右衛門風呂しか見た事ない母は、普通の風呂の入り方がわからない。
どの蛇口をどうひねったら水が出るとか、どれがシャンプーでボディーソープかすらもわからない。
私が付きっきりで、なんとか風呂を終えた。
そうこうしている間に、姉の旦那さんが仕事から帰ってきた。
母が、今晩お世話になります。風呂も入れさせてもらってありがとうとお礼を言うが、特に反応無し。
上手くいっているとは全く思っていなかったが、ここまで冷え切っていたとは…。
無言で風呂場を見に行って、姉に浴室を掃除して新しく湯をはれと言っていたので、私が慌てて掃除して準備した。
その後、母が持参したバッグを確認する事にした。
旅行用バッグ2つもある。
驚いたことに中を見ると、衣類全てがカビている。
母に何故こうなったと聞くと、洗濯機の脱水機能が壊れているからと言う。
それを聞いていた姉が、それでも外に干せばいいだろ。四六時中、晴れてようが締め切った木造の家の中に干してるから、家も洗濯物もカビるんだろとヒステリック気味に怒鳴り散らした。
まぁ、私はもともと認知症を疑って迎えにきているので、仕方ないかと思った。
田舎から東京に出るので、12月で寒いしアウターだけは私が購入して持参して正解だった。
なんとか奇跡的に状態がマシなニットとズボンを1セットだけ発見した。
明日着ていくものはなんとかなりそうだ…。
姉には申し訳ないが、その他の衣類は全て廃棄してもらうことにした。
母には、東京に行ったら全て買うからと説得した。
そして、最後に母のエプロンに手を伸ばした時、ポケットから白い紙が落ちた。
これが更に姉を発狂させることになる…。