あの日のこと③

家に着くと母は、
「家が1番よか。」と言った。
介護ベッドに腰掛け、ゆっくりと部屋着に着替えはじめた。
朝から、様子がおかしいと感じていた私は、
「大丈夫?」と声をかけた。

「大丈夫よ。それよりも、ここに6人しょうがないから布団敷いて寝よかね。」

ん?6人?意味がわからない。

「母ちゃん、6人て誰がいるの?誰もいないよ?この家には、母ちゃんとくまおとくまこの3人だけだよ?」
そう言うと、しばらく間があって、
「そりゃそうよね、うん。」
でもまた、
「しょうがない。狭かけど、ここに布団敷いて6人みんなで寝よ。」と言う。
今思うと、亡くなる一週間前くらいから、頻繁に養母の名前が出てきていたので、お迎えにきていたのかも知れない。

「疲れたから、あんた達も少し昼寝せんね。くまおさんはどっか行くの?」
「後で、お義母さんとこ顔出すみたいよ。私達も少し寝るよ。」
「そうそう。お義母さんとこはちゃんと行かせないとよ。お義母さん一人で寂しいやろから。じゃ、おやすみ。」

私もこの後、用事があって出掛ける予定でいたのだが、虫の知らせというのだろうか。
今日は、出掛けたら大変な事になる気がして用事をとりやめて家にいようと決めた。

とりあえず、みんな昼寝をした。

まさか、これが最後になるとも知らずに。

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