母パニック
羽田空港に着いた。
飛行機の中では特に問題なく落ち着いていた。
荷物を受け取る前に、トイレを勧めるが行こうとしない。
この後、リムジンバスで1時間程はかかる。
もう、数時間はトイレに行っていないのだから、無理矢理連れて行った。
実家は、未だにくみ取り式の和式だった。
母を個室に入れたが、鍵の閉め方がわからないらしい。
説明しても埒が明かないので、ドアが開かないように私がドアの前に立っていた。
今度は、水を流せないという。
これまた埒が明かないので、身なりをきちんとしたら出てくるよう伝え、私が入れ替えで入りトイレチェックした。
更にはセンサーで感知するタイプの蛇口も初めてだ。
先に私が手本を見せる。
まぁ、ただ手を出すだけだが…。
母も同じようにやる。
もちろん、水が出る。
何故か水が出た途端、びっくりして手を引っ込めたかったんだろうが、手を横に広げるような事をした為に周りに水が飛び散った。
また、それを拭かなければならない。
他に人が居なくて、本当に良かった。
トイレとの格闘を終え、荷物を取りに行く。
エスカレーターがあるのだが、母はエスカレーターを見た事もない。
動く地面には恐ろしく乗れないというので、エレベーターは遠いし短い階段なので、ゆっくりと降りた。
無事に荷物を受け取り、私も少し不安だった為、空港まで来てくれるようお願いしていた夫と合流した。
もう家に着くのかと聞くので、これから1時間バスに乗ると言うと、母のテンションは急激に下がった。
まぁ、これだけ長距離移動で、全てが人生初なのだから疲れるよなと思ったが、もう少し踏ん張ってもらうしかない。
そして、やっと、バスへ乗り込んだ。