貯金箱
小学生の頃から、お金が足りなくなると近所の人にお金を借りに行かされていた。
あまりにも借りすぎていて、母ではもう貸してくれないとなると、子供を利用して金策だ。
大体は、1時間近く自分の両親への悪口を聞かされ、1000円か2000円を投げつけられた。
ある日、向かった先は同級生の家。
その子の父親が私の母と同級生だった。
「お父さんかお母さんいる?」
「仕事でまだ帰ってきてないよ。どうしたの?」
「ううん。また来るよ。」
私が帰ろうとした時、
「ちょっと待ってて。」
彼女が部屋の奥へ行ってしまった。
そして、貯金箱を抱え戻ってきた。
「お年玉を貯めてたんだ。これ持って帰っていいよ。」
そう言って、私に差し出してきた。
私は、「ごめんね。」と言うのが精一杯だった。
泣き顔を見られるのが嫌で貯金箱をその場に置き、走って帰った。
それから間もなく、彼女は家庭の事情で引っ越していった。
「ごめんね」は言えたが、「ありがとう」は言えないままだった。
今でも、貯金箱を見ると胸が苦しくなってしまう。