無事に保護されますように
私の住む地域では、主に高齢者が自宅に戻っていないと、家族の連絡を受け町内放送で、名前、住所、身長、服装等の情報が放送される。
今日も今朝から行方がわからなくなっていると、夕方にも放送があった。
昼間は暖かかったが、大丈夫だろうか。
以前、放送されたが無事に保護されたおじいさんと同じ団地に住んでいた知人がいて話を聞いたことがある。
そのおじいさんは認知症で息子さんと暮らしていたらしい。
ある日、息子さんが仕事で留守中にタクシーをつかまえ、かなり離れた場所を指定して無事に到着したが、所持金が無く、困ったドライバーさんが交番に相談したところ所持品に息子さんの連絡先が書いてあり、無事に保護されたとのことだった。
そのおじいさんの指定した場所は、昔に家族で住んでいた場所だったという。
認知症になると、昔の事の方がよく覚えていたりするらしい。
きっと、たくさんの思い出が詰まった大切な場所だったのだろう。
今日の行方がわからなくなっている方も、大切な家族が待っている大切な場所に早く帰れるといいのだが。
冷え込まないうちに、早く無事に保護されますように。
認めてあげれば良かった
母に対して、いくつか後悔していることがある。
今更、考えても仕方ないと思うのだが、ふとした瞬間に繰り返し考えてしまう。
生まれ育った田舎を仕方なく離れ、70過ぎてから東京に出てきた母。
改めて色々考えてみるが、やはり、私がここで一緒に暮らすしか方法はなかったと思う。
年老いてからの初めての環境、デイサービスやショートステイでの人間関係。
母からすれば、東京が嫌だと言っても帰れないのだから、頑張るしかなかっただろう。
孤独だったかも知れない。
母は、一生懸命頑張っていた。
なのに、私は母の頑張りを認めてあげられなかった。
認知症の母との日々をストレスに感じることの方が多かった。
もっと優しい言葉をかけてあげれば良かった。
もっと話を聞いてあげれば良かった。
もっと母の存在を認めてあげれば良かった。
母に一言だけしか伝えられないとしたら、やっぱり「ありがとう」より「ごめんね。」になってしまう。
Lemon
米津玄師さんの「Lemon」という楽曲が大好きだ。
この曲が主題歌になっていたドラマを観ていたのだが、母が亡くなった時期と重なり、この曲を初めて聴いた時、こんなに自分の気持ちと重なるというか代弁してくれている歌はないと衝撃を受けた。
歌詞の内容も、実際に大切な人を亡くした経験がないと書けないんじゃないかと思うようなものに感じたので、当時は米津玄師がただただ天才だと思っていた。
後で、この曲を製作中にお祖父様が亡くなられて、あなたが居なくなって悲しい、あなたの事が好きだったという想いを歌詞にしたと聞いて、妙に納得した。
この一年間、ほぼ毎日聴いていた。
聴いては涙した。
当初は、母を失った悲しみだけにしか目がいかず、この曲もただ悲しい歌になっていたのだが、やっと最近になって自分の中で希望のある曲になった。
「雨が降り止むまでは帰れない」という歌詞がある。
母を失った直後は、土砂降り過ぎて降り止む日なんて来るのだろうかと思っていた。
今は、少し雨が弱まってきて時々は、雲の間から光がさす日も出てきた。
これからも、降ったり止んだり、時にはまた土砂降りの日もあるかもしれない。
それでも、母が遺してくれた光を見失わないように生きていこうと思う。